●『本格小説』水村美苗
新潮文庫、上597/下532p
高校時代、昼休みに図書館で読んでいた本です。
しかしながら100P強読んだところであえなく卒業、わざわざハードカバーを買う気にもなれずに今日に至る。
先日の文庫化に伴い購入、改めて最初から読み直しました。
ちょっと作者を見直した。
以前に書かれた『私小説 from left to right』は、読んで字の如く日本語で横書きの小説。
では目新しいかというとその書き方だけが変わっているだけであり、内容はまるで変わり映えしない。あまり変化しない行動様式に基づく似たような行動の繰り返し、「うだうだ」と表現するのが適切であると感じる内容だった。
そんな人にこういう話が書けるのかと再評価。
但し、これは他人から聞いた話をそのまま落としたらしい。
「私小説性からの脱却」を目指して書いたものらしいが、他人から聞いた話をそのまま書いて脱却と思っているならば笑止。事実を基にほぼそのままを書いているという意味では大差が無い。
もしそこまで計算ずくの上で他人から聞いたという「こと」にして一から構築したならば大した作家だ。
とりあえず内容としてはかなり面白いと思う。
流石に作者が「天の恩寵」「奇跡」と呼ぶだけのことはあり、話は壮大だ。それを追う限りは十分楽しめる。
ただ、先にも述べたように、それが作者の評価、力量に繋がっているかというと疑問。所詮他人の話そのままなんじゃないか?と。
8743p/42195p