2006年05月04日

●『カンバセイション・ピース』保坂和志

新潮文庫、491p

 日々の生活の様子を描きつつ、その中で生じる雑多な思考を逐一記したもの。
 ストーリーなど存在せず、小説というよりはエッセイに近い。
 時折考えることはあっても明文化されることは少ない事柄が多く記載されていて、『小説の自由』を楽しめた人ならばこれも読めるだろう。


 一言だけ言うと

 眼は単なるセンサーであって視線は人間の錯覚で生まれたものだ。
 
 視線という考えは読んで字のごとく、おそらく眼が感覚器官であるということが判っていない時代に生まれた考えなのだろうが、保坂さんはそれを引きずっているんじゃないだろうか。
 勿論、眼からは視線という何かが出ているという錯覚を基盤として生じる思考はあるだろうけど。

9427p/42195p

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