2006年08月02日

●樋口裕一『バカを使いこなす聞き方・話し方』

幻冬舎/212p

ある意味、必読。

「先生のお話を聞いて、どんな話し方をすればリーダーにふさわしいかは、よくわかりました。しかし、こちらがどんなに知的な話をしても、相手がバカでは伝わらないと思います。私たちがふだんもっとも苦労しているのは、バカな部下にどう対応するかです。私たちは会社でバカに囲まれています。バカとどう付き合っていくのかが、もっとも大事なのです。それを話してほしかった」

以上は、はじめに、から引用した著者樋口裕一さんが「リーダーにふさわしい話し方」の講演後に言われたという一説である。
上手な話し方、わかりやすいものの言い方、できると思わせる話し方……といった本は非常に多い。しかし、それらは全て相手が自分と同水準かそれ以上の「知的」人間であることを前提としているものだ。では、相手がバカの場合はどうすればいいのか。

バカ、バカ、と連呼するとエリートの傲慢のように聞こえることが多い。しかし、それこそバカでない人には大体わかっていることであるが、エリートにもバカはいる(むしろ多いかもしれない)。バカと学歴は全く無関係である。人をバカだと見下すバカがいるのが何よりの証拠だ。結局、バカとはひとえに人間性に関わる性質であると見るのが妥当だろう。この本で紹介されているのは、そんなバカたちに対する上手な話し方なのである。

さて、一通り読んでみて、この本には大きく二種類の利用法があると思った。本文中ではバカを実に33種類に細分し、それぞれのタイプのバカに、それぞれの対処法を与えている(世間の狭いバカ、大物ぶりたがるバカ、空気を読めないバカ、自分が見えないバカ、表面しかみないバカ、何でも反抗するバカ、無教養バカ、人のせいにするバカ、思い込みバカ……etc)。利用法のひとつは、まずは本の意図の通り、これら様々のバカにたいする話し方、捌き方を心得ておくために読むことである。まず間違いなく、私たちはこれから様々なバカに話をしなければならない場面に遭遇する。友達付き合いならば話をしない、適当にあしらう、友達をやめるなどなど、いくらでも対処のしようがあるというものだが、社会に出て企業に勤めて、リーダーシップを取る立場になるとなれば、必然、友達付き合いのようにはいかない。バカへの話し方を知っておくことは肝要である。

もうひとつの利用法は逆に、紹介されている様々のバカの中に、自分のバカを見つけることである。恐らくこれを読んで、33種類のどのバカにも自分が相当しないと考える人間はいないだろう(本気でそう考える人がいたとすれば、聖人君子か本物のバカかどちらかだ)。程度の差こそあれ、私も随分自分に該当しそうなバカを見つけた。そうすれば、そこに書かれた対処法を見て、「自分がそう対処された経験から、或いはそうされないために、どのように振舞うべきか」がわかる。いわば戒めのための利用法である。

ある意味必読、と書いたのは後者に依るところも大きい。自分のバカを理解するというのは、いかに自己啓発を行ってみたところで、客観的に書かれたものがないとなかなか難しい。

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