2006年11月19日

●ゲーデル『不完全性定理』

岩波文庫・青/309p

第一部にゲーデルの不完全性定理に関する論文の翻訳を、第二部にその解説を収録。
不完全性定理は数学の定理でありながら、哲学、心理学、社会学など様々な方面に多大な影響を与え、多くの人の興味を惹いてきた。名前だけは聞いたことがあるという人も多いのではないかと思う。

では不完全性定理とは一体何なのか。巷には「サルでもわかる」解説も多い。事実、不完全性定理はその本質からいって、「意味」だけを知るのにたいした苦労は必要ないのである。しかし恐らく、実際の論文を見ないことにはこの定理の感嘆すべき厳密性もわからないし、歴史的背景を知らなければその「意義」はわからない。不完全性定理は一人の天才がぽっと出で世に示したようなものではなく、ゲーデルに至るまでの間に、幾人もの大数学者たちが繰り広げた「数学基礎付け運動」の壮大なドラマがあったのである。

論文部分は二回や三回ではなかなか理解しづらいため、相当回数読み直したり数式を紐解く必要があるが、解説は数式そのものよりもほとんどをヒルベルト計画をめぐる歴史的背景に費やしていて、平易で読みやすい。第二部の最後に設けられた不完全性定理の発展的解説も、「読めばわかる」といった性格のものである。

下手な小説よりよほどわくわくする、と私は思う。

22699p/42195p

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